伊予美人(さといも)
生産地:陸地部全域
「伊予美人」は愛媛のオリジナルブランド
「伊予美人」は、愛媛県農業試験場(現・愛媛県農林水産研究所)が開発した愛媛オリジナルのさといもの品種です。「愛媛農試V2号」という品種なのですが、愛媛県内のJAから出荷されたものだけが「伊予美人」(※)という名で販売されています。
柔らかく、さといも本来のねばりも強い「伊予美人」。濃厚な甘みを持ち、白くきめ細やかな肉質で、今とても人気の高いさといもなのです。味にクセがないので、どんな料理にも相性抜群といわれています。
出荷時期
品種名 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | ||||||||||||||||||||||||
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伊予美人 |
品種名 | 時期 |
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伊予美人 | 9月中旬〜4月 |
愛媛はさといもの生産量全国第4位!
愛媛県はさといもの生産量(収穫量)、なんと全国第4位!意外に思われる方も多いかもしれませんね。ちなみに1位埼玉県、2位千葉県、3位宮崎県。(農林水産省「令和2年産・作物調査(野菜)」)愛媛県内では宇摩地域が最大の産地です。日本三大局地風の「やまじ風」がある宇摩地域では、強風に対して比較的強い作物として、さといも栽培が古くから定着し、水稲との輪作体系が確立してきました。
しかし、今治も負けてはいませんよ!近年、JAおちいまばり管内でも水稲の代替作物として生産に力を入れており、富田や玉川、朝倉地区などを中心に約90名の里芋部会のメンバーがおいしいさといもを作るため切磋琢磨しています。
若手農家から見た、さといも栽培の魅力
のどかな田園風景が広がる山里、玉川町にあるさといも畑で迎えてくれたのは、個性的なドレッドヘアがトレードマークの八木良太さんと、笑顔がさわやかな井出智也さん。若手農家のおふたりにお話を伺いました。
「さといもは比較的栽培しやすい作物なので、就農経験が浅くてもチャレンジしやすいと思います」と八木さん。八木さんも井出さんも今治市出身、ご実家が兼業農家だったこともあり、幼い頃から農業には馴染みがあったそうですが、就農当初はわからないことも多かったと言います。そこをしっかりとサポートしてくれたのがJAの営農指導員をはじめとする関係者のみなさん。生産拡大に向けた助成や栽培管理の支援をおこない、「愛媛さといも広域選果場」による集荷ロットの拡大や長期安定出荷、コスト低減の取り組みなど、生産から販売までをトータルでサポートしています。その結果、JAおちいまばり管内では2018年から2019年にかけては1戸あたりの所得が33%も増加したそうです!
「農業を志す者としては、自分が作ったものを『おいしい!』と言って食べてくれることは素直に嬉しいですし、やりがいにもつながります。しかし、それだけで農業を続けていくのは難しいのが正直なところです。その点、さといも栽培は安定した収益が見込めるのでそれも魅力の一つです。」とお二人は正直な胸の内を話してくれました。
「さといもは春に植え付けをします。稲刈りが終わったあと、9月中旬から4月頃まで長い期間をかけて収穫、出荷できるのですが、掘り上げずに土の中に埋めておけばそこが貯蔵庫代わりになるんですよ。特別に倉庫を用意する必要もないし、自分の都合のいいタイミングで掘り出せばいいので助かります。」(八木さん)
さといも農家としては、それで生計を立てていくわけですから、きちんと収益をあげることは重要なこと。持続可能な農業を推進するためのヒントが一つ、ここにあるようです。
ほっくりおいしい、伊予美人
さといもは連作を嫌う作物なので、前作で水稲を栽培した場所で作ります。「栽培期間中は生育に大きく影響する水の管理が重要。病害虫の対策にも苦労します。」と井出さん。水を切らさないよう管理し育てたさといもは、夏頃には背丈ほどの草丈になります。葉が枯れた9月下旬頃からが収穫のスタート。丁寧に掘り起こしたさといもを一株一株土を落としながら分割して収穫していきます。
ところで、さといもには親芋、子芋、孫芋があるってご存じでしたか?親芋は種芋から出た芽が成長したものであり、茎のちょうど真下にあります。一方、子芋は親芋の横から出た芽が成長したもので、さらにその小芋の横にできるのが孫芋です。柔らかさや食感などが少しずつ異なります。おもしろいですね。
元気な若手生産者が増え、ますます産地化が進むJAおちいまばり産「伊予美人」。寒い季節は芋炊きや煮物、あんかけなどもおすすめ。心もからだもほっとするおいしさ。ぜひお試しください!
(※)「伊予美人」はJA全農えひめの登録商標
伊予美人 3つのスゴイ!
- 味の良さ
やわらかく、粘りも強く旨みがある! - 栄養豊富
特有のネバネバには栄養素がいっぱい! - 変幻自在の調理法
色白だから見た目も美しい!味に癖がなくどんな料理にも相性バツグン!
ベテラン農家のメッセージ
JAおちいまばり里芋部会会長の越智修二さんは、2022年の日本農業賞 個人経営の部で優秀賞に選ばれたベテランです。さといも栽培への思いを伺いました。
日本農業賞 評価のポイントは?
さといもの栽培はなかなかの重労働です。そこで栽培の機械化で体への負担を減らし、同時に効率を上げることに取り組みました。古い機械でも自分で修理して改良すれば、費用を抑えながら利益を上げることができます。そしてさといもの連作障害対策として米と麦を輪作作物に取り入れ、安定した収益も確保しました。そうした工夫を評価していただいたようです。
最近は若手農家が増えていますね
今までにない新しい考え方で農業にチャレンジする人もいて頼もしさを感じています。さといもは、努力すればしただけのことはある作物です。価格も比較的安定していますし、頑張って良いさといもを作ってほしいですね。
今後取り組んでいきたいこと
やはり安定した生産量と質の向上が大切です。私たちは2012年から本格的にさといもの栽培を始めた若い産地ですが、もっと勉強して技術を磨き、美味しい伊予美人を息子たちの世代へ引き継いでいきたいと思っています。
もっと詳しく
JAおちいまばりのさといも
2012年の葉タバコ廃作に伴う品目転換を機に、部会員21軒、栽培面積2.4haからスタートしたJAおちいまばりのさといも栽培。現在(2023年)は90軒、約40haにまで拡大しました。なぜここまで増えているのでしょうか。
広がるさといもの生産 そのわけは
まずは水田を活用して行うことができるのは大きな強みです。サトイモは連作を嫌うため、多くの生産者は栽培場所を入れ変え水稲や麦との輪作を行います。水稲の作業とも競合せず、湿害のないサトイモは水田を活用した栽培に好条件。また、機械化一貫体系をつくり、栽培規模に応じた機械を導入・推進することで省力化につながり、栽培面積の拡大が実現しました。これらが農業所得の増大にもつながっています。
広域選果場の取り組み
JAおちいまばりは、東予地区の3JA(JAうま、JAえひめ未来、JA周桑)と連携し、愛媛さといも広域選果場(四国中央市)で共同選果を行っています。愛媛県産ブランド「伊予美人」として全国各市場に出荷し安定した供給ができるため、消費者の方々へも安定した価格での販売が可能となりました。